【詩】静けさの中心で

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僕のはじまりは
やさしさから もっと遠い場所にあった

笑っている大人たちの声が
いつも ひとつ遠くて
僕の「いやだ」は
笑い飛ばされて 風に消えた

教室の真ん中の後ろ
そこが 僕の居場所だった
誰とも交わらず
昼休みのざわめきの中
ひとりだけ 静けさを味方にして

僕は「子ども」じゃなかった
感情をひとつずつしまいこんで
大人たちの目を見ていた
目の奥にある
本当の顔を探していた

幼稚園は
小さな地獄だったけれど
唯一 先生の動きを眺める時間は
僕の呼吸を整えてくれた

自転車の後ろで揺られる朝
冷たい空気の匂い
通り過ぎる景色は
僕の中の何かを削り
そして 形作っていた

僕は今も 一人が好きだ
誰にも触れられない
言葉の底に沈む
あの頃の僕に 触れるように
こうして 書いている

小さな1円玉の重み
ハーモニカの音の振動
それらは
今も僕の中で 微かに響いている

「変わっているね」
その言葉の先に
少しだけ
誇りを持てるようになった

変わらなかったのは
心の奥にある
静けさを愛する目線
誰にも見えないまま
それを抱いて 生きてきた

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