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静寂とバランス

朝5時、目が覚めた。部屋の隅に置かれた焼酎の瓶が、昨晩の記憶をぼんやりと呼び起こす。体に良くないと分かっているのに、数杯なら大丈夫だと自分に言い聞かせる。ストレスのない時間が、ほんのひとときでも欲しかった。
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揺れる窓の向こうで

昨日、2025年2月12日(水)。職業センターでの面談があった。15時40分からの2時間、過去を振り返るような会話を続けた。それだけで、どっと疲れた。
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ポテチと僕の時間

「疲れた」この一言が僕の決まり文句であり、合言葉だった。家族はもう慣れたもので、この言葉を聞いても何も言わない。ただ、母だけは決まって「何を食べる?」と問いかける。
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SNSは、町の外から届く光だった

駅前の時計塔が、18時を知らせるチャイムを鳴らした。僕の住む町は、その音を合図に一斉に静まり返る。夕暮れの空はどこまでも広くて、それだけで、少し泣きたくなった。小さなコンビニのバイトが終わると、僕は決まって河原沿いのベンチに座り、スマホを取り出す。Instagram、X、TikTok——タイムラインには都会の光が溢れていた。
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波の名前

第一章 — 布団の中の世界朝6時。スマートフォンのアラームが鳴り響く。けれど彼は起き上がれなかった。高校3年の春。進路に答えはなく、友人関係は微妙なまま。「今日はうまく笑えるだろうか」そんなことを考える日々が、もう何週間も続いていた。
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静かに崩れていく「支援」──A型事業所に通う僕が見た現実

プロローグ「A型事業所なんて、もう存在しないと思ってるんです。」そう呟いたのは、まだ5月の空気が肌寒かったある朝だった。通所のバスに揺られながら、僕は窓の外に広がるグレーの街をぼんやり眺めていた。心のどこかでは、今日も“支援”の名のもとに、また失望させられるだろうことをわかっていた。
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チョコレートは僕を癒す

ときどき、頭の奥がシューッと音を立てて、空気が抜けるみたいに静かになる瞬間がある。考える力も、話す気力も、声にならないまま、泡のように浮かんでは消えていく。
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「明日がない世界」

空が、ほんの少しだけ赤く染まっていた。午後五時の駅前。誰かを待っている風でもなく、ただ歩道橋の影に立っている。「明日が来ないって、どういうことだと思う?」僕は独り言のようにつぶやいた。けれど、風がそれを誰かに届けてくれる気がしていた。
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