小説風のかたち 朝焼けの空に、貨幣の渦がゆっくりと広がっていた。新しい年の始まりを告げるはずの光景は、どこか鈍く、冷たい。祈りの声はまだ震えている。雇用の命綱も、正月の陽に煙る決意も、誰かの欲望が描いた“平和”という儚い幻をなぞるように、宙を漂っていた。 2025.10.16小説
小説風に咲く 朝、目覚めたとき、彼は自分が「生きている」ことに気づいた。昨日と変わらない寝癖、変わらない天井の染み、変わらない薬の並んだ棚。変わったのは、昨日の夢だけだ。彼は20代の終わりに病を得た。精神と神経の病だった。身体ではなく、思考が先に疲れ果ててしまった。時折やってくる発作と、ずっと続く沈黙のような孤独。 2025.10.16小説
小説問いの果てに、光は差す 朝、5時半。耳元で目覚ましが鳴り、布団の中で目を開けた。まだ体は眠たがっている。鼻がムズムズしているのは、季節の変わり目か、気の緩みか。それでも、ベッドから身体を起こす。 2025.10.15小説