【詩】夏の在処

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蝉の声は
遠い誰かの叫びのように
空の奥から降りてくる

焼けたアスファルトに
ひび割れた時間が滲み出す

影が逃げて
僕らの輪郭もぼやける真昼

首筋を伝う汗は
忘れかけた名前を思い出させる

「暑いね」
と笑ったきみの声に
一瞬だけ
涼しい風が吹いた気がした

タオルとスポドリ
それだけで一日を乗り切った頃
僕らは未来よりも
目の前の陽射しを生きていた

誰にとっても平等な
この焦げるような季節

でも
きみといた夏だけは
なぜか 他のどの夏より
色濃く焼きついている

蝉の声がやみ
風が方角を変える頃

きみの言葉の余韻だけが
空に残っていた

季節が交差し
すべてがやわらいでいくその刹那

僕の中の夏は
音もなく
深く、深く沈んでゆく

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